“わがめない” 法律ほうりつうばった

2018ねん03がつ16にち 1844ふん NewsWebEasy
仮名がなレベル

最近さいきん、「優生ゆうせい保護法ほごほう」という、ややむずかしい名前なまえ法律ほうりつをニュースでみみにすることがおおくなったとおもいませんか?「優生ゆうせい保護法ほごほう」は、知的ちてき障害しょうがいなどを理由りゆう本人ほんにん同意どういがないまま、強制的きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつおこなうことをみとめていた法律ほうりつです。不妊ふにん手術しゅじゅつけた女性じょせいがことし1がつはじめて、くに相手取あいてどって裁判さいばんこしたのをきっかけに、いま、救済きゅうさいけたうごきが急速きゅうそくはじまっています。どもを権利けんりはなぜうばわれてしまったのか、当事者とうじしゃたちのうったえから救済きゅうさいけた課題かだいさぐっていきたいとおもいます。(社会部しゃかいぶ記者きしゃ 斉藤さいとう隆行たかゆき福田ふくだ和郎かずお

まん6000にん合法的ごうほうてき不妊ふにん手術しゅじゅつ

優生ゆうせい保護法ほごほうができたのは昭和しょうわ23ねん戦地せんちからの大量たいりょうしゃ戦後せんご出産しゅっさんブームによる人口じんこう増加ぞうか抑制よくせいすることなどを目的もくてき議員ぎいん立法りっぽうつくられました。

法律ほうりつ条文じょうぶんには「不良ふりょう子孫しそん出生しゅっせい防止ぼうしする」と明記めいきされ、精神せいしん障害しょうがい知的ちてき障害しょうがい遺伝性いでんせい疾患しっかんなどを理由りゆう不妊ふにん手術しゅじゅつ中絶ちゅうぜつみとめていました。当時とうじおや障害しょうがい疾患しっかんがそのままどもに遺伝いでんするとかんがえられていたことがその背景はいけいにありました。

優生ゆうせい保護法ほごほうのもとでは、本人ほんにん同意どういがなくても医師いし不妊ふにん手術しゅじゅつ必要性ひつようせい診察しんさつし、かく自治体じちたいもうけられた審査会しんさかいが「適当てきとう」と判断はんだんすれば手術しゅじゅつおこなわれました。さらに障害者しょうがいしゃからだ拘束こうそく麻酔ますい使用しようべつ手術しゅじゅつだとだまして手術しゅじゅつおこなうことまでみとめられていました。

厚生労働省こうせいろうどうしょうによりますと昭和しょうわ23ねんから平成へいせいねんまでの半世紀はんせいきあまりのあいだ本人ほんにん同意どういなく強制的きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつけさせられたひと全国ぜんこくでおよそ1まん6000にんにのぼるとされています。

こえをあげはじめた当事者とうじしゃたち

これだけおおくのひと手術しゅじゅつけたのにもかかわらず、このことじつひろくはかたられてきませんでした。しかし、ことしにはいって事態じたいおおきくうごはじめます。

ことし1がつ宮城県みやぎけん知的ちてき障害しょうがいのある60だい女性じょせい不妊ふにん手術しゅじゅつ強制きょうせいされ、基本的きほんてき人権じんけんみにじられたとして、くに損害そんがい賠償ばいしょうもとめる裁判さいばんこしたのです。

優生ゆうせい保護法ほごほうもとでの強制きょうせい不妊ふにん手術しゅじゅつをめぐる裁判さいばん全国ぜんこくはじめてでした。じつはこの女性じょせい裁判さいばんこすことができたのは、宮城県みやぎけん女性じょせい昭和しょうわ47ねん手術しゅじゅつけたという記録きろくのこっていたからでした。

残存ざんぞん資料しりょうはわずか2わり

手術しゅじゅつ裏付うらづける記録きろくは、どこまでのこされているのか?
わたしたちは2月中旬がつちゅうじゅんから3がつにかけて全国ぜんこく47の都道府県とどうふけん公文書館こうぶんしょかん優生ゆうせい保護法ほごほう不妊ふにん手術しゅじゅつかんする資料しりょうのこっているかアンケート調査ちょうさおこないました。

そこでかびがってきたのが手術しゅじゅつ実態じったい把握はあくきわめてむずかしい現実げんじつでした。

手術しゅじゅつけたり手術しゅじゅつ必要性ひつようせいみとめられたりしたひと名前なまえなど、個人こじん特定とくていできる資料しりょうのこっていたのは、26の道府県どうふけんわせて3300人分にんぶん全体ぜんたいのおよそ2わりにとどまっていたのです。

もっとおおくの資料しりょうのこっていたのが、北海道ほっかいどうで1129にん宮城県みやぎけんが859にん埼玉県さいたまけんが330にん千葉県ちばけんが220にん福島県ふくしまけんが120にん大分県おおいたけんが101にんなどでした。

また、手術しゅじゅつけたさい年齢ねんれいもっとひくかったのは、宮城県みやぎけんの9さいおんなで、さらに未成年みせいねんが926にんにのぼっていることもわかってきました。

一方いっぽうで、資料しりょうのこっていないと回答かいとうした自治体じちたい東京都とうきょうと大阪府おおさかふなど21の都府県とふけんにのぼります。強制きょうせい不妊ふにん手術しゅじゅつもっとおお実施じっしされたのは、昭和しょうわ30年代ねんだいはじめごろ、いまから60年以上ねんいじょうまえです。おおくの資料しりょう役所やくしょさだめた保管ほかん期間きかんをすぎ、廃棄はいきされたとられています。

記録きろくがない…女性じょせい悲痛ひつううった

本当ほんとうぬようなおもいでくるしいおもいでここまできました」
16さいとき優生ゆうせい保護法ほごほうのもとで不妊ふにん手術しゅじゅつけさせられたという宮城県みやぎけんの70だいの1にん女性じょせいわたしたちの取材しゅざいおうじました。

女性じょせい手術しゅじゅつあと、20だい結婚けっこんしましたが、どもができないこともあって、かんじて離婚りこん。「優生ゆうせい保護法ほごほうによって人生じんせいだいなしにされた」と悲痛ひつうおもいをわたしたちに吐露とろしました。この女性じょせいは、これまで手術しゅじゅつ記録きろく開示かいじ宮城県みやぎけんもとめていましたが、「資料しりょう存在そんざいしていない」とかえ回答かいとうされてきました。女性じょせい手術しゅじゅつ記録きろくがないため、裁判さいばんこせずにいたのです。

記録きろくがなくてもみとめる”宮城県みやぎけん英断えいだん

しかし、いま、まったままになっていた女性じょせい時間じかんうごはじめています。

宮城県みやぎけん村井むらい知事ちじが、ことし2がつ、「公式こうしき記録きろくがなくても論拠ろんきょがあれば手術しゅじゅつけたことをみとめる。裁判さいばんこしたならば手術しゅじゅつけたかけていないかあらそうことはない」と発言はつげんしたのです。

宮城県みやぎけんは、この女性じょせい手術しゅじゅつけたあとがあることや手術しゅじゅつ必要性ひつようせいについて判定はんていした文書ぶんしょがあること、それに一連いちれん証言しょうげん矛盾むじゅんがないことなどから、女性じょせい不妊ふにん手術しゅじゅつけたことを認定にんていするとしました。

つまり、記録きろくのこされていなくても手術しゅじゅつけたことをうかがわせる客観的きゃっかんてき証拠しょうこがあれば、手術しゅじゅつけたと認定にんていすると判断はんだんしたのです。

女性じょせいはいま、みずからのまったはりうごかすべく、提訴ていそけて準備じゅんびすすめています。これ以外いがいいま裁判さいばんこすうごきは北海道ほっかいどう東京とうきょうなど各地かくちはじまっています。

救済きゅうさいうごした政治せいじ

当事者とうじしゃたちのこうしたうごきがひろがるなか政治せいじでも救済きゅうさいけておおきくうごはじめています。

がつにちには、超党派ちょうとうは国会議員こっかいぎいん議員ぎいん連盟れんめい発足ほっそくさせ、会長かいちょう自民党じみんとう尾辻おつじもと厚生労働大臣こうせいろうどうだいじん就任しゅうにんしました。

さらに、3がつ13にち自民党じみんとう公明党こうめいとう与党よとう両党りょうとう作業さぎょうチームをもうけて、具体的ぐたいてき立法りっぽう措置そち検討けんとうはじめることをめました。

記者会見きしゃかいけん公明党こうめいとう石田いしだ政務せいむ調査ちょうさ会長かいちょうは、「記録きろくのこっているひとのこっていないひとがいるので、現時点げんじてんではいつまでにということはもうげられないが、いつまでもやっていいという問題もんだいではない」とべ、検討けんとういそかんがえをしめしました。

優生ゆうせい保護法ほごほうがもともと超党派ちょうとうは議員ぎいん立法りっぽうつくられたことをかんがえれば、政権せいけん与党よとうがこの問題もんだい本腰ほんごしはじめたことは救済きゅうさいけておおきな意味いみつとえます。

“1にんれない救済きゅうさい仕組しくみを”

今後こんごのぞまれることは、くにによる謝罪しゃざい補償ほしょう仕組しくみを早急さっきゅうつくることです。

海外かいがいではおなじように強制的きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつおこなわれていたドイツやスウェーデンでもすでに当事者とうじしゃ謝罪しゃざい補償ほしょうおこなっています。

今回こんかいわたしたちの調査ちょうさ手術しゅじゅつ記録きろくなどがのこっていることがわかったのは、およそ1まん6000にんのうち、わずか2わりにすぎません。

しかし、行政ぎょうせい記録きろく廃棄はいきしたのに手術しゅじゅつけたことを直接ちょくせつ証明しょうめいできる記録きろくがないことを理由りゆう救済きゅうさいあみかられるようなことは絶対ぜったいにあってはならないと専門家せんもんか指摘してきします。

優生ゆうせい保護法ほごほう歴史れきしくわしい東京大学とうきょうだいがく大学院だいがくいん市野川いちのかわひろしこう教授きょうじゅは「裁判さいばん時間じかんもコストもかかるので、国会こっかい判断はんだん救済きゅうさいのための法律ほうりつつくり、被害者ひがいしゃ名誉めいよ回復かいふく補償ほしょうをすべきで、くに責任せきにんって記録きろく保全ほぜん集約しゅうやく整理せいりをして国会こっかい提供ていきょうすべきだとおもう。手術しゅじゅつけたひとたちはかつて社会しゃかいから“不良ふりょう子孫しそん”というレッテルをられたわけなのでもう一度いちどほうによって尊厳そんげん回復かいふくすることが大事だいじだ」とべ、幅広はばひろ救済きゅうさい必要性ひつようせい強調きょうちょうしています。

今回こんかい宮城県みやぎけんしめしたようにたと記録きろくがなくても客観的きゃっかんてき証拠しょうこによって手術しゅじゅつけたとみとめるかんがえはおおきな前例ぜんれいになるとおもいます。

いまわたしたちになによりもとめられているのは、国家こっか合法的ごうほうてき不妊ふにん手術しゅじゅつつよいていた歴史れきし真摯しんし(しんし)にい、そむけないことです。そして、1にんれることのない救済きゅうさい仕組しくみをくに責任せきにん早急さっきゅうつくることを、おおくのひとたちがのぞんでいることをわすれてはならないとおもいます。

※プログラムでふりがなをけっているので、 間違まちがっている場合ばあ いもあります。