中国人観光客 今どきの人気店って?

10月1日から始まった中国の大型連休「国慶節」で、日本では中国人観光客の姿を各地で目にします。

「爆買い」は落ち着いたけれど、皆が引きずっているスーツケースに何を入れて帰るのか気になりますよね。

そこで外国人向けの観光情報をインターネットで紹介している企業の担当者から「人気店リスト」なるものを入手。そのうちの1つを訪ねてみました。(ネットワーク報道部記者 玉木香代子)



ステッキ・傘専門店に行ってみた!

教えてもらった人気店リストを見ると「葛飾区の高級うなぎ屋」や「外苑前の美容室」それに「原宿のアイス店」などが並んでいます。

その中で目にとまったのは「銀座のステッキ・傘の専門店」。

爆買いとはちょっとイメージの違う店で何が起きているのか気になったのです。


訪れたのは銀座6丁目にある創業明治15年の老舗「銀座タカゲン」。

静かな音楽が流れる店内の奥にはショーケースが並び、いかにも銀座の店という雰囲気です。

社長の高橋源一郎さんに了解を得て、客が多くなるという昼過ぎからカメラ片手に待ち伏せしました。



人気は折り畳み傘

まもなく訪れたのは中年夫婦と若い娘さんの家族。店先に陳列された折り畳み傘が気になっているようです。

中国語が話せる従業員に説明を受けて選んだのは、お父さんがいかにもの「黒」。

お母さんはピンク地にチェック柄、娘さんはオレンジにピンクの花模様をあしらったキュートな折り畳み傘で3000円前後のものでした。

3人とも「丈夫で長持ちする」「値段も手ごろ」と満足げに話していました。


業者も仰天の売れ行き

店に聞くと、中国人の折り畳み傘人気は去年くらいから火がつき始めたということです。

ことしは、多い月で去年の2割多い千本を超える折り畳み傘が売れているほか、品質がよく値段が高めの商品も売れているため、売り上げ金額でみるとことしは去年の10倍に達しているそうです。


さらに10月の国慶節に入ってから1日に50本近く売れた日もあり、卸売り業者にも追加の注文をしたそうです。

すると「なぜそんなに売れるのか?」と業者の担当者も驚き、つい先日、店に視察に訪れたそうです。

高橋社長は「爆買いは落ち着いたと言われるけれど、傘に関しては飛躍的に伸びている。軽くて丈夫でデザイン性の高い数千円の傘から、生地に絹などの高品質な素材を使った1万円を超える商品までよく売れている」と話しています。


メーカーに聞いてみた

この現象はほかの店でも起きているのか?それを確かめるために店頭に置いてあった傘を製造している「ワールドパーティー」の中村俊也社長に聞いてみました。

すると、「折り畳み傘は量販店や空港などで幅広く、売れている」との答え。会社の売り上げはおととしが32億円でしたが去年は38億円と6億円増えたと言います。メーカーでは「国内市場が伸び悩んでいることを考えるとこの売り上げ増の理由はインバウンドしか考えられない」と話しています。


売れる秘密は?

この会社では、傘をファッションアイテムの1つとしてとらえ、デザイン性の高い折り畳み傘を製造してきました。

最近ではポーチのような収納袋がついた折り畳み傘が人気です。


こうした商品のターゲットは日本の若い女性たち。雨でも通勤が楽しくなるような「生活を楽しむ」商品を目指してきたのです。

この会社、折り畳み傘を製造しているのは中国ですが、現地では、まだまだ安くてシンプルなものが大半で、日本のように機能性が高くかつデザインに凝ったものはまだ少ないそうです。こうした理由から日本の折り畳み傘の人気が高まっているというのです。


中村社長は「これまではターゲットとして捉えてこなかった人たちではあるけれど、中国の人は女性を中心にカラフルなものを好む傾向があり、ヒットする素地はあったと思う。国内市場が縮小する中でこれからは大切なマーケットになる」と話しています。


今や大切なお客様

再び銀座のお店。

夕方になるといよいよ店が混んできました。

中国人観光客が次々と店に入ってきては、品定めに余念がありません。

候補の商品をスマホで撮影して母国の友人の意見を求める人もいました。

また、日本の折り畳み傘は軽くて丈夫な反面たたみ方が複雑なものもあるため、店には「傘の折り畳みは店員にお任せください」という中国語の張り紙を出しています。気兼ねなく傘を開いて吟味してもらおうという店側の配慮です。


社長の高橋さんは「目の肥えたお客さんも増えてきてよい物をお買い上げいただけるお客様が多い。今や大切なお客様です」と話していました。

家電製品に象徴される「爆買い」が流行語に選ばれたのはおととしのこと。それからわずかの間にふだんの生活に彩りを添える商品に人気が集まるインバウンド商戦の現場。

今や年間3兆円を超える外国人観光客による日本国内での消費をさらに高めるためのヒントがあるような気がしました。