ノーベル文学賞 “読書したい”と思ったあなたへ

2017年10月06日 21時28分 NewsWebEasy
仮名がなレベル

すっかり秋らしくなったなぁ、と思ったときに飛び込んできたノーベル文学賞のニュース。日系イギリス人のカズオ・イシグロさんの作品について、こんな紹介がありました。「戦前の日本人画家が主人公。終戦で社会の価値観が大きく変わる中、戸惑いながら生きる姿を繊細に表現した作品」「第2次大戦後のイギリスの田園地帯が舞台。邸宅で働く執事の回想を通して、失われつつある伝統を描いた大作」

「読んでみたい」と思った人も多いのではないでしょうか。ネット上でも「おもしろそうなので読んでみたい」、「ドラマしか知らないから原作もほかの作品も読んでみよかな」…そんな書き込みが目立ちました。

一方で、「本を読む時間がほしい。料理をする時間がほしい。走る時間がほしい。ゆっくりする日がほしい。何でこんなに仕事が忙しいんだ!」という悲痛な投稿も。私たちの周りでも「仕事以外の本が全然読めていない」「“積ん読”が300冊を超えた」などの声が聞かれました。

胸を弾ませながらページをめくった経験もあるのに、いつしか離れてしまった読書。再び楽しむためのヒントを取材しました。(ネットワーク報道部記者 大窪奈緒子、栗原岳史、吉永なつみ)

進む“読書離れ”

本を読まなくなる「読書離れ」の傾向は、以前から指摘されています。文化庁が4年前、16歳以上の人を対象に行った調査では、本を1か月に1冊も読まないという人が47.5%。半数近くを占めました。平成14年の調査では37.6%だったので、10年余りでおよそ10ポイント増えたことになります。

「本を1冊も読まない」と答えた人の割合を年代別に見ると、20代が40.5%、60代が47.8%、70歳以上が59.6%で、実は、若者だけでなく高齢の人たちも、読書離れが進んでいるのです。

調査では、「読書量は以前に比べて減っているか、増えているか」についても尋ね、「減っている」と答えた人が65.1%と、ほぼ3分の2を占めました。理由としては、「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」が最も多く、次いで「視力など健康上の理由」や、パソコンやスマートフォンなどの「情報機器で時間が取られる」などがあげられました。

文化庁は、「すべての年代で本を読まなくなっている実態がうかがえる。情報化社会だからこそ、さまざまな価値観の作品に触れ、あふれる情報の中で判断する力を養う大切さを伝えていきたい」としています。

でも、読む人は読んでいる!

ところがよく考えると、この調査でも半数以上の人は、月に1冊以上、本を読んでいるのです。

月に「1、2冊」という人が34.5%、「3、4冊」の人も10.9%いました。全国大学生活協同組合連合会が大学生を対象に行っている調査でも、「毎日1時間以上、本を読んでいる」という学生が毎年20%ほどいるのです。スマホがはやろうと、忙しい世の中になろうと、読んでいる人は読んでいるのです。

どうやって時間を作る?

では、どうやって時間を作っているのでしょうか。私生活でも本をよく読むという、大手書店に勤める複数の店員に尋ねたところ、多かった答えは「通勤時間」と「寝る前」でした。ゆったり読みたいときは「休日の朝、少しだけ早起きして」という人もいました。

ネットを探ると、こんな投稿も。「忙しいので、本は、時間が少しできると、たまたまそこにある本を読む。だから、あちこちに本が置いてあって、いろいろ並行して読んでいる」

この取材をしている女性記者の1人も、同じようなことをしていました。1歳児の母親のこの記者、ゆっくり楽しむ時間はないので、洗濯機の上やキッチンの脇など、自宅のあちらこちらに読みたい本を置いておき、洗濯が終わるまでの間や、やかんの湯が沸くまでの間といった“隙間の時間”を活用しています。

このほか、時間の作り方ではありませんが、デザインがほぼオーダーメードのブックカバーを買ったというエピソードがネット上で紹介されていました。「気に入ったカバーをかけて本を読むのっていいね」 読書をより一層楽しむ方法になっているようです。

習慣を変える

時間の作り方、そして、読書を楽しむヒントについて、選び抜いたこだわりの本だけを売るという東京・江戸川区の書店「読書のすすめ」の店主、清水克衛さんにも聞きました。

清水さんは開口一番、「忙しい人ほど読書していますよ」と言い切りました。本を読む時間がないと感じるなら、まずは時間の使い方を見直すべきだと言います。

「スマホが習慣になっている人は、無意識にスマホを触ってしまうでしょう。積み重ねていけば、ものすごい長時間になっているはず。読書も習慣。習慣を変える工夫をしてみてください」と話していました。

楽しむヒント

清水さんは、さまざまなジャンルの本を、枕元にいつも5冊から10冊、積んでいるそうです。そのときの気分で、読みたい本を選んで読むというスタイルです。

ここで大切なのは、「軽い気持ちで読むこと」。本を読むのがしんどかったり、なかなか続かなかったりする人は、「読み始めたら最後まで読まなければならない」という考えにとらわれる傾向があると言います。

「教科書ではないので、分からないところはとばせばいい。著者は膨大な知識と経験をもって本を書いているので、読者に分からないことがあるのは当然。読みやすいところから読めばいいんです」

この軽快な心持ちが、読書を続けるコツだそうです。

おもしろい本との出会い方

「先を読みたくてうずうずする」…そんな本と出会うには?

教えてくれたのは、シンプルな方法でした。信頼できる友達や上司、同僚に、「最近読んでおもしろかった本を教えてください」と聞くことです。そして、教えてもらった本は素直に読むことです。自分が選ぶ本は、どうしても種類が偏りがち。読書のだいご味は、知らない世界に足を踏み入れることでもあるので、新しい分野に目を向けることができ、紹介してくれた人との距離も縮まるというわけです。

本との出会いを後押し

読書を楽しんでもらうための新しい取り組みも始まっています。

東京・千代田区の区立図書館では、「図書館コンシェルジュ」と呼ばれる人が常駐しています。図書館の活用方法や、蔵書の探し方はもちろん、図書館にない本についても、本の町として知られる神保町などにある160以上の書店と提携して、どこで手に入るか教えてくれます。

千代田区立図書館の坂巻睦さんは、「まず図書館に来て、ぐるっと本をながめてみてください。気になるテーマがきっと見つかるはずです。そして、今抱えている悩みや知りたいことなどを気軽に伝えてください。直接、悩みを解消することはできませんが、手がかりになる本を紹介できるはずです」と話していました。

地域ぐるみで

青森県八戸市では、市をあげて読書の普及に取り組んでいます。

市は去年12月、図書館とは別に、本を買うことができる全国でも珍しい市営の施設を設けました。地元の書店の品ぞろえを補う目的で、自然科学や芸術などの専門的な本を中心に集め、マニアックな小説なども多くそろえているということです。

市民が本に触れる機会を増やすことも目的で、ゆったりと座って読書する環境が整備されているほか、市民向けの読書会や、「飲み物を飲みながら本について何か話しませんか」といった、ゆるいテーマのイベントも開いているということです。

最近は、スマートフォンやタブレット端末で読む電子書籍の利用も広まっています。内容を音声で聞くことができるオーディオブックも人気で、大手配信サービス会社の担当者によりますと、ここ1年ほどは、若者だけでなく子育て中の母親やシニア世代などが家事や散歩をしながら楽しみたいというニーズが高まり、会員数が急増しているということです。

読書の秋。これまでの習慣を少し見直して、新しい世界へと踏み出してみるのはいかがでしょうか。

※プログラムでふりがなをけっているので、 間違まちがっている場合ばあ いもあります。