東大とうだい教授きょうじゅ論文ろんぶん 大学だいがくがねつぞうかいざんの不正ふせい認定にんてい

2017年08月01日 17時04分

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国内こくない有数ゆうすう分子ぶんし生物学せいぶつがく研究者けんきゅうしゃである東京大学とうきょうだいがく教授きょうじゅらが、国際的こくさいてき科学かがく雑誌ざっし、ネイチャーなどに発表はっぴょうした5ほん論文ろんぶんについて、大学だいがく実験じっけんデータのねつぞうなどの研究けんきゅう不正ふせいがあったとする調査ちょうさ結果けっか公表こうひょうしました。教授きょうじゅは「かく実験じっけんからられる結論けつろんおおえそうとする意図いとったものではないが、ふか反省はんせいします」とコメントしています。

東京大学とうきょうだいがく所属しょぞくする教授きょうじゅ発表はっぴょうした論文ろんぶん不自然ふしぜんてんがあるとする匿名とくめい告発こくはつけて調査ちょうさった結果けっか分子ぶんし細胞さいぼう生物学せいぶつがく研究所けんきゅうじょ渡邊わたなべ嘉典よしのり教授きょうじゅらがおととしまでの8年間ねんかんに、国際的こくさいてき科学かがく雑誌ざっし、ネイチャーやサイエンスなどに発表はっぴょうした5ほん論文ろんぶんについて、画像がぞうやグラフにねつぞうかいざんの研究けんきゅう不正ふせいがあったとする調査ちょうさ結果けっか公表こうひょうしました。

ほん論文ろんぶんでは、実際じっさいにはおこなわれていない架空かくう実験じっけんデータをもとにグラフがつくられていたほか、比較ひかくする2まい画像がぞうまれるように加工かこうソフトを使つかって色合いろあいやあかるさをえるなどしていて、不正ふせいとされたグラフや画像がぞうわせて16あったとしています。

大学だいがくはこうした不正ふせい行為こうい渡邊わたなべ教授きょうじゅ当時とうじ助教じょきょうわせて2にんったと認定にんていしました。大学だいがくは「渡邊わたなべ教授きょうじゅ研究室けんきゅうしつでは不適切ふてきせつ画像がぞう加工かこうなどが常態化じょうたいかしていた」と指摘してきし、あやまった教育きょういくった渡邊わたなべ教授きょうじゅ責任せきにんおもいとしています。

大学だいがくによりますと、不正ふせい認定にんていされた5ほん論文ろんぶん関係かんけいする公的こうてき研究費けんきゅうひは、14おく8000万円まんえんあまりにのぼっていて、今後こんご大学だいがく返還額へんかんがくについて文部科学省もんぶかがくしょうなどと協議きょうぎしたいとしています。

調査ちょうさ結果けっかについて渡邊わたなべ教授きょうじゅは「かく実験じっけんからられる結論けつろんおおえそうとする意図いとったものではなく、不正ふせい認定にんていけたことにたいしては自己じこ不明ふめいふか反省はんせいします」とコメントしています。

渡邊わたなべ教授きょうじゅ不正ふせい認定にんていされた5ほん論文ろんぶんについて、訂正ていせいげの手続てつづきを雑誌社ざっししゃすすめています。

東京大学とうきょうだいがくでは渡邊わたなべ教授きょうじゅかかわったほかの論文ろんぶんについても不正ふせいがないか調査ちょうさったうえで処分しょぶん検討けんとうする方針ほうしんです。

一方いっぽう同時どうじ匿名とくめい告発こくはつされていた東京大学とうきょうだいがく医学部いがくぶの5にん教授きょうじゅについて、大学だいがく不正ふせいはなかったとしています。

渡邊わたなべ教授きょうじゅこころよりおわび」

東京大学とうきょうだいがく発表はっぴょうについて、渡邊わたなべ嘉典よしのり教授きょうじゅは「今回こんかい論文ろんぶん調査ちょうさ結果けっか真摯しんし(しんし)にめ、わたくしどもの論文ろんぶん不適切ふてきせつ画像がぞう操作そうさふく図表ずひょう掲載けいさいされましたことを、こころよりおわびもうげます。いずれも論文ろんぶんべている科学的かがくてき結論けつろん間違まちがっていないとかんがえており、掲載けいさいされた雑誌ざっし指導しどうにしたがって、必要ひつよう修正しゅうせい作業さぎょうすすめております。指摘してきけた操作そうさは、論文ろんぶんかく実験じっけんからられる結論けつろんくつがえそうとする意図いとったものではなく、これらの操作そうさがねつぞうかいざんにたるというきびしい不正ふせい認定にんていけましたことにたいし、自己じこ不明ふめいふか反省はんせいいたします」とするコメントをしました。

認定にんていされた不正ふせい内容ないよう

東京大学とうきょうだいがくがまとめた調査ちょうさ報告書ほうこくしょでは渡邊わたなべ教授きょうじゅらが中心ちゅうしんとなって発表はっぴょうした5ほん論文ろんぶんわせて16の画像がぞうやグラフにねつぞうかいざんがあったと認定にんていしています。

このうち平成へいせい22ねん科学かがく雑誌ざっし「サイエンス」に発表はっぴょうされた論文ろんぶん細胞さいぼう分裂ぶんれつこるさい、それぞれの細胞さいぼう染色体せんしょくたいひとしくかれる仕組しくみの一端いったん解明かいめいしたとするもので、一部いちぶデータについては実験じっけんおこなわれていないにもかかわらず架空かくう数値すうち入力にゅうりょくされてグラフが作成さくせいされていたということです。

これについて報告書ほうこくしょでは「渡邊わたなべ教授きょうじゅ虚偽きょぎのグラフであることを承知しょうちのうえで、論文ろんぶん投稿とうこうしたもので、かり実験じっけんをしていないことを認識にんしきしていなかったり、実験じっけんをしていないことを記入きにゅうすることをわすれたりしたのであればいちじるしく注意ちゅうい義務ぎむおこたっていた」としてねつぞうだと認定にんていしています。

またおととしにサイエンスに発表はっぴょうされた論文ろんぶんではがん細胞さいぼう顕微鏡けんびきょう撮影さつえいした2まい細胞さいぼう画像がぞうで、緑色みどりいろひからせた特定とくていタンパクたんぱくしつりょうくらべる実験じっけんで、片方かたほう画像がぞう緑色みどりいろつよひかるよう色調しきちょう操作そうさした一方いっぽう比較ひかく対象たいしょう画像がぞうでは緑色みどりいろひかりよわめる操作そうさおこなわれていたということです。

これについて報告書ほうこくしょでは「正常せいじょう科学かがくてきコミュニケーションをさまたげる行為こういだ」として、撮影さつえいした当時とうじ助教じょきょうがねつぞうしたと評価ひょうかするのが相当そうとうだとしています。

一方いっぽう渡邊わたなべ教授きょうじゅ当時とうじ助教じょきょうたいして実験じっけん方法ほうほう画像がぞう取得しゅとくについて指示しじ指導しどうおこなっていて、ねつぞう関与かんよしているものとかんがえられると指摘してきしています。

さらに2011ねんにネイチャーに発表はっぴょうした論文ろんぶんでは特定とくていタンパクたんぱくしつがあるか調しらべた実験じっけん画像がぞうについて、加工かこうソフトを使つかってあかるさなどをえることで、実験じっけん結果けっか一部いちぶえなくする操作そうさおこなわれていたとしています。

報告書ほうこくしょでは「実験じっけん担当者たんとうしゃ当初とうしょ消去しょうきょされていない画像がぞう使つかって研究室けんきゅうしつない報告ほうこくしており、消去しょうきょされた画像がぞう作成さくせいしたのは渡邊わたなべ教授きょうじゅみとめられる」と指摘してきしています。

渡邊わたなべ教授きょうじゅかいざんをみずからったり、不正ふせいおこなわれていることをっていたりしたと認定にんていされたほか、注意ちゅうい義務ぎむいちじるしくおこたって不正ふせい認識にんしきせずに論文ろんぶん投稿とうこうしたなどとして、東京大学とうきょうだいがく不正ふせい認定にんていされた16すべてのとグラフについて、渡邊わたなべ教授きょうじゅ責任せきにんがあるとしています。

研究けんきゅう不正ふせいくわしい専門家せんもんか非常ひじょう深刻しんこく事態じたい

研究けんきゅう不正ふせい問題もんだいくわしい大阪大学おおさかだいがく中村なかむら征樹まさき准教授じゅんきょうじゅは「研究けんきゅう不正ふせい問題もんだい東京大学とうきょうだいがくだけではなく、さまざまな大学だいがくきてきたが、分子ぶんし細胞さいぼう生物学せいぶつがく研究所けんきゅうじょのような研究けんきゅうおもきをいた施設しせつでも不正ふせい問題もんだい相次あいついできるというのは非常ひじょう深刻しんこく事態じたいだ」と指摘してきしました。

そのうえで、「研究けんきゅう現場げんばでは、これまで不正ふせい問題もんだいげられても、ひとごととしてめてきた実態じったいがあるのではないか。とく研究成果けんきゅうせいかもとめられるプレッシャーをもっとかんじているのは、研究けんきゅう重視じゅうししてきた東京大学とうきょうだいがくなどで、研究けんきゅうなかでこれぐらいはゆるされるだろうというかんがかたが、時間じかん経過けいかとともに世間せけんからだんだんとずれ、不正ふせいいたる『逸脱いつだつ常態化じょうたいか』とばれる現象げんしょうきているのだとおもう」とはなしています。

また、不正ふせい行為こうい教授きょうじゅみずからったと大学だいがく認定にんていしたことについては、「これまでも研究けんきゅう不正ふせい再発さいはつ防止策ぼうしさくおこなわれてきたが、どうしても若手わかて研究者けんきゅうしゃ学生がくせい対象たいしょうとした倫理りんり教育きょういくなどが中心ちゅうしんで、シニア世代せだい研究者けんきゅうしゃへの対策たいさく形式的けいしきてきなものだったとえる。また、研究けんきゅう不正ふせい研究室けんきゅうしつ環境かんきょう密接みっせつ関係かんけいしているとわれ、学生がくせい若手わかて研究者けんきゅうしゃも、教授きょうじゅ対等たいとう意見いけんえる風通かぜとおしのよい研究けんきゅう環境かんきょうつくれていたかも焦点しょうてんの1つだ」と指摘してきしています。

そのうえで、海外かいがいでは研究けんきゅう環境かんきょう改善かいぜんけて、大学だいがく組織そしきぐるみで対策たいさくおこなっているとして、研究室けんきゅうしつまかせにせず研究けんきゅう環境かんきょうがどういった状況じょうきょうになっているかや、研究者けんきゅうしゃたちがどのようなことを問題もんだいだとかんじているのかを大学だいがく調査ちょうさし、組織そしき全体ぜんたい対応たいおうしていくことが研究けんきゅう不正ふせいむことにつながるとしています。

最近さいきん東大とうだいでの研究けんきゅう不正ふせい

東京大学とうきょうだいがくではここすうねん論文ろんぶんのデータのねつぞうかいざんなどの研究けんきゅう不正ふせいや、臨床りんしょう研究けんきゅうをめぐる倫理上りんりじょう問題もんだいなどが相次あいついで発覚はっかくしています。

このうち、東京大学とうきょうだいがく分子ぶんし細胞さいぼう生物学せいぶつがく研究所けんきゅうじょでは3年前ねんまえ今回こんかいとはべつ研究けんきゅうグループが33ほん論文ろんぶんでねつぞうかいざんの不正ふせいったと認定にんていされ、元教授もときょうじゅのほか、当時とうじ准教授じゅんきょうじゅ研究員けんきゅういん学生がくせいわせて11にん不正ふせいかかわったと認定にんていされています。

またおなじ3年前ねんまえには東京大学とうきょうだいがく医学部いがくぶかかわる臨床りんしょう研究けんきゅうで、白血病はっけつびょうくすり研究けんきゅう製薬せいやく会社がいしゃ社員しゃいん重要じゅうようなデータ解析かいせき関与かんよするなど研究けんきゅう客観性きゃっかんせいうたがわれる事態じたい発覚はっかくしたほか、アルツハイマーあるつはいまーびょう診断しんだんのための臨床りんしょう研究けんきゅうでおよそ600にん患者かんじゃから血液けつえきなどを採取さいしゅしたものの、研究けんきゅう態勢たいせいやデータのあつかいが不十分ふじゅうぶん臨床りんしょう研究けんきゅうりまとめることが一できなくなるなどの不適切ふてきせつ実態じったいあきらかになりました。

このほか、6年前ねんまえと7年前ねんまえには社会科学研究所しゃかいかがくけんきゅうじょ当時とうじ助教授じょきょうじゅ工学系こうがくけい研究科けんきゅうか当時とうじ助教じょきょうがそれぞれ発表はっぴょうした複数ふくすう論文ろんぶんにほかのひと論文ろんぶん盗用とうようつかっています。

東京大学とうきょうだいがくでは研究けんきゅう不正ふせい倫理上りんりじょう問題もんだい相次あいついで発覚はっかくしたため、3年前ねんまえ不正ふせい防止ぼうし対策たいさく実施じっしなどをおこな研究けんきゅう倫理りんり専門せんもん部署ぶしょもうけ、実験じっけんデータを保存ほぞんしたり論文ろんぶんのデータをチェックしたりする体制たいせい整備せいびするなどの対策たいさくすすめてきました。

しかし今回こんかい不正ふせい指摘してきされた論文ろんぶんなかにはこうした対策たいさくられたあと発表はっぴょうされた論文ろんぶんふくまれていて、東京大学とうきょうだいがく研究けんきゅう不正ふせいへの対応たいおう十分じゅうぶんだったのかについてもあらためてわれる事態じたいになっています。