イラク首相“ISに勝利しモスルを解放”と表明

2017年07月10日 08時05分 NewsWebEasy
仮名がなレベル

イラクのアバディ首相は、9日、過激派組織IS=イスラミックステートに対する軍事作戦が行われてきたイラク北部のモスルを訪問し、ISに勝利し、モスルを解放したと表明しました。国際社会の脅威となってきたISの壊滅に向けて大きな一歩となり、ISが「首都」とするシリアの都市、ラッカの攻略作戦にも弾みがつくと見られます。

イラクのアバディ首相は、9日午後、過激派組織ISがイラク最大の拠点としてきたモスルを訪れ、奪還作戦を指揮した軍の幹部らから報告を受けました。

イラク首相府によりますと、この中でアバディ首相は、ISに勝利しモスルを解放したという認識を示しました。そして、モスルの安全と安定を維持する必要があるとして、ISの残党を排除するよう指示したということです。

モスルの奪還に向けて、イラク軍は去年10月、軍事作戦を開始し、アメリカ主導の有志連合の支援を受けながら包囲網を徐々に狭め、9か月近くかけてようやく解放しました。

モスルは、ISの指導者が「イスラム国家」の樹立を一方的に宣言した場所で、住民から税金を徴収するなどISにとって政治的、財政的に重要な都市で、勢力を拡大する拠点となっていました。

モスルの解放は、国際社会の脅威となってきたISの壊滅に向けて大きな一歩となり、ISが「首都」と位置づけるシリア北部の都市、ラッカの攻略作戦にも弾みがつくと見られます。

作戦開始から9か月で解放

イラク軍が、クルド人部隊などとともにアメリカ主導の有志連合の支援を受けてモスルの奪還作戦を始めたのは、去年10月です。近郊の町や村を次々に制圧して、2週間余りでモスル市内に到達しました。

ことし1月にはモスル市内の東側を制圧し、態勢を立て直して2月から残る西半分の攻略に乗り出しました。

これに対して、過激派組織ISは多くの住民を人間の盾にしたうえで、入り組んだ旧市街の地形などを利用してスナイパーによる狙撃や自爆攻撃を繰り返して抵抗しました。

イラク軍は、住民の犠牲を最小限にとどめるため慎重に部隊を進め、作戦開始から9か月近くかけてようやくモスルの解放を果たしました。

モスル解放 ISはイラク国内で最大の拠点失う

モスルは、中心部をチグリス川が流れ、古くから交易の拠点として栄えたイラク北部の経済の中心です。かつては、およそ200万人が暮らすイラク第2の都市でした。

3年前の2014年6月、ISはイラク政府軍の反撃をほとんど受けずにモスルを制圧しました。住民の多くがイラクでは少数派のイスラム教スンニ派で、多数派のシーア派が主導する中央政府や軍に対する不満が強く、スンニ派のISはそこにつけ込みました。

旧市街にあるモスクは、指導者のバグダディ容疑者が、イスラム共同体の最高権威を意味するカリフとして「イスラム国家」の樹立を一方的に宣言した場所です。その後、ISはモスルで独自の行政組織を確立し、多くの住民から税金と称して金を徴収したほか、周辺の油田を資金源として戦闘や組織運営の費用を賄う財政的な基盤も整え、支配地域の拡大に乗り出しました。

モスルが解放されたことで、ISはイラク国内で最大の拠点を失ったことになり、組織の弱体化は決定的と見られます。

モスル市内で歓喜の声

モスル市内では、9日夜、大勢の住民が街に繰り出し、イラクの国旗を振ったりVサインを掲げたりしながら歓喜の声を上げていました。

また、モスル西部のカフェには、過激派組織IS=イスラミックステートの支配下では禁止されていたというビリヤードやカードゲームに興じる人や、水たばこをふかす人が集まり、にぎわいを見せていました。
カフェを訪れた住民は「モスルの解放は、すべてのイラク人、特にモスルの人に幸せを運んできた。神に感謝する」と話していました。

一方で、住民からは、「安全は保障されたが、人々は水や電気の不足に苦しんでいる」とか、「ここにいる誰もが職を失っている。街を再建し、復興することが私たちの願いだ」などと、戦闘で荒廃したモスルの復興を強く願う声も相次ぎました。

イラン外相 祝意のツイート

イラクのアバディ首相がモスルを解放したと表明したことを受けて、隣国イランのザリーフ外相は9日、ツイッターで「モスルが解放されたことに勇敢なイラクの国民と政府に祝意を表します。イラクの人々が力を合わせれば、彼らが達成できるものに限界はない」というメッセージを投稿しました。

仏大統領 ラッカ攻略に向け軍事作戦続ける姿勢示す

「有志連合」の参加国として、過激派組織IS=イスラミックステートに対する軍事作戦を行ってきたフランスのマクロン大統領は、9日、声明を発表しました。

この中で、マクロン大統領は「イラク政府や国民の勝利を心から歓迎する」と述べ、モスルの解放に力を尽くしたイラクの人々に敬意を表しました。そのうえで、「モスルでの勝利がイラクの歴史の新しいページを開き、国の平和や安定につながることを願う。フランス政府はイラクに寄り添っていく」と述べ、モスル解放後のイラクの再建を支援する考えを強調しました。

また、マクロン大統領は「これで有志連合の作戦が終わったわけではなく、断固としてISを追跡する。特にシリアのラッカの解放に向けて、フランスは軍事面での支援を続ける」と述べ、ISが「首都」と位置づけるシリアの都市、ラッカなどの拠点の攻略に向けて、軍事作戦を続けていく姿勢を示しました。

英国防相「やるべきことはまだ残っている」

イギリスのファロン国防相は9日、声明を出し、「罪のない市民の命を全く省みないISが重要な拠点としてきた街で敗北したことを歓迎する」としてイラク軍の軍事作戦を評価しました。そして、イギリス軍は「有志連合」の参加国としてアメリカとともに主導的な役割を果たしてきたとしたうえで、「イラク西部にはこの野蛮な組織が残っており、やるべきことはまだ残っている」と述べ、ISの壊滅に向けた作戦を支援していく考えを示しました。

米シンクタンク「ISを排除するうえで重要な節目」

過激派組織IS=イスラミックステートのイラク最大の拠点モスルが解放されたことについて、アメリカ、ワシントンのシンクタンク、外交評議委員会のスティーブン・クック上級研究員はNHKのインタビューに対し、「ISを排除するうえで重要な節目となる」と評価しました。

その一方で、「ISから解放された地域を統治する必要があるが、イラクの中央政府の統治能力はぜい弱で、アメリカや同盟国の支援が必要だ。アメリカ政府は、依然としてイラクでやるべきことがたくさんある。オバマ前政権がアメリカ軍をイラクから完全撤退させた後、混乱が生じたことを教訓に、トランプ政権は長期間にわたりイラクに軍を駐留させることになるだろう」と指摘しました。

また、イラクでは、イスラム教のスンニ派とシーア派の宗派対立のほか、独立を求める北部のクルド系との調整も必要になると指摘する一方で、「問題は、トランプ政権の中で、この極めて複雑な調整を担当できる高官がいないということだ」と述べました。

そして、シリアではISが「首都」と位置づける北部ラッカの制圧作戦が進んでいますが、クック上級研究員は「トランプ政権のシリア戦略が見えてこないのが問題だ。ISの掃討作戦にだけ関心を払っていて、シリア内戦の終結には関わろうとしておらず、今のアメリカのやり方ではシリアに安定をもたらすことは難しいだろう」と指摘しました。

次の焦点はラッカの制圧

モスルが陥落したことで、今後の焦点は、ISが「首都」と位置づけるシリア北部のラッカの制圧に移ります。

アメリカ主導の有志連合の支援を受けるクルド人の勢力が主体となった部隊は、先月、ラッカを制圧するための最終的な作戦に乗り出しました。ラッカが陥落すると、ISが標ぼうする、既存の国境をまたいだ「イスラム国家」は名ばかりとなり、支配するのはシリアとイラクに点在する限られた地域だけになります。

もう1つの焦点は、指導者のバグダディ容疑者の行方です。ISは、イスラム共同体の最高権威カリフを名乗るバグダディ容疑者の下で、多くの外国人を含む戦闘員や支持者を引き付けるとともに、支配地域で恐怖による統治を正当化してきました。

バグダディ容疑者について、ロシア国防省は、先月、シリア北部で行った空爆で死亡した可能性があることを明らかにましたが、アメリカ政府は懐疑的な見方を示し、依然として行方はわかっていません。バグダディ容疑者が死亡したり拘束されたりすればISは求心力も失うことになり、弱体化に拍車がかかることになります。

※プログラムでふりがなをけっているので、 間違まちがっている場合ばあ いもあります。